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粗暴なやつには 喜びがあり、
やさしいやつには なげきがあるが、
ぼくはなんにも 欲しくない、
誰が気の毒というわけもない。

気の毒といえば そいつはぼく自身のこと――ちっとばかりおかわいそう。
宿なしの野良犬たちもかわいそう。
さて だから――
居酒屋へまっしぐらに入りびたったというわけだ。

きみたち ちみもうりょうの亡者のくせに、なんだって ぼくに悪態をつく?
それともなにかい、もう同国人あつかいはできんとでも言うのかね?
ちょいとした酒代(さかて)が要れば
パンツまで質に入れあげたおたがいではないか。

濁り目を 窓に向ければ
胸のうさ 焼けつくばかり
街道 ひとり陽の中に濡れに濡れ
とめどなく 寄せてかえす。

街道に小僧がいる。鼻たれ小僧がひとりいる。
空気は焼け むさくれてカラカラよ。
この小僧 とってもしあわせなできなんだ。
鼻くそほじりに ほうけてる。

ほじくれ、ほじくれ、かわいいやつ、ういやつ。
その指を つけ根まで押し込みな。
けどな、そう、そんなどえらい力でな、
てめえの心に突っ込むのだけは止めときな。

わしかい? わしぁもうおしまい――おじけづいてる。
ごらんよ この瓶の林を!
コルクをこうしてあつめてる――
なに、心に栓をするためさ。




「与太もんの愛恋」の一節 内村剛介訳
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