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アレキサンダー大王の統治時代だが、
ディオメデスという男が、
盗賊として、指をくくられて、
大王の前に連れてこられた。
その男、掠奪を繰り返す
ありふれた海賊であった。
死罪を給るために、
この大王の前に引き出されのだ。



皇帝は次のように尋ねた、
「お前は、なぜ海で盗みを働くのだ?」
相手は答える、
「なぜ盗人呼ばわりされるのですか?
小さな舟で海を
荒し回るからですか?
あんたのようにおれも大船団で武装できていたら、
おれもあんたのように皇帝ってことですかね」



「どうしろというんです? しょせん運命のせいですよ、
運命に対しては、本当にどうしようもありません、
運命が、不当な境遇をおれに授けてくれたってわけですよ、
そのせいで、こんな振る舞いをすることになったのです、
とにかくお許しください、
わかってください、よく言われているように、
貧しさの中には誠実は
宿らないと言うことを」



皇帝はディオメデスの言うことを
注意深く聞き、
「お前の運命を不運から幸運へと
変えてやろう」と言った。
実際そのようにとりはからった。その後、ディオメデスは誰にも
くってかかったりすることはなく、誠実で立派な人になった、
これは、ローマの大学者と言われたヴァレリウスが、
真実のこととして伝えている。



もし神が、もう一人の情深い
アレキサンダー大王に、おれを合わせて、
その人が、おれを幸運へと導いてくれ、
それなのに、悪事を続けるようなことがあれば、
おれは、火刑になり、灰になるよう自らを
裁いてみせよう。
人は必要にかられて、道を誤り、
飢えれば狼も森からでてくる。




フランソワ・ヴイヨン『遺言』 十七節から二一節 
佐々木敏光 訳


最近「海賊」という言葉を目にする機会が増えたので、なんとなく掲載してみる。


 
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