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鬼の児放浪
――鬼の児の卵を割って五十年
一
鬼の児がかへつてきた。ふるさとに
耳の大きな迷信どもは、
おそるおそる見まもる。この隕石を、
燃えふすぼつた黒い良心を。
かつて、鬼の児は、石ころと人間どもをのせた重い大地をせおひ、
霧と、はてしなきぬかるみを、ゆき悩んだ。
あるひは首を忘れた鴎のとぶ海の洟しるを。
ふなむしの逃げちるふくろ小路を。
暗渠を。むし歯くさいぢごく宿を。
二
こよひ、胎内を出て、月は、
荊棘のなかをさまよふ。
若い月日を、あたら
としよりじみてすごし。
鬼の児の素性を羞ぢて、
蝋燭のやうに
それを吹消すことを学んだ。
天からくだる美しい人の蹠をおもうては、
はなびらをふんで
ふたたびかへることをねがはず、
鬼の児は、時に、山師共と銭を数へ、
たばことものぐさに日をくらした。
鬼の児は、憩ない蝶のやうに旅にいで、
草の穂の頭をしてもどつてきた。
鬼の児はいま、ひんまがつた
じぶんの骨を抱きしめて泣く。
一本の角は折れ、
一本の角は笛のやうに
天心を指して嘯く。
「鬼の児は俺ぢやない
おまへたちだぞ」
――鬼の児の卵を割って五十年
一
鬼の児がかへつてきた。ふるさとに
耳の大きな迷信どもは、
おそるおそる見まもる。この隕石を、
燃えふすぼつた黒い良心を。
かつて、鬼の児は、石ころと人間どもをのせた重い大地をせおひ、
霧と、はてしなきぬかるみを、ゆき悩んだ。
あるひは首を忘れた鴎のとぶ海の洟しるを。
ふなむしの逃げちるふくろ小路を。
暗渠を。むし歯くさいぢごく宿を。
二
こよひ、胎内を出て、月は、
荊棘のなかをさまよふ。
若い月日を、あたら
としよりじみてすごし。
鬼の児の素性を羞ぢて、
蝋燭のやうに
それを吹消すことを学んだ。
天からくだる美しい人の蹠をおもうては、
はなびらをふんで
ふたたびかへることをねがはず、
鬼の児は、時に、山師共と銭を数へ、
たばことものぐさに日をくらした。
鬼の児は、憩ない蝶のやうに旅にいで、
草の穂の頭をしてもどつてきた。
鬼の児はいま、ひんまがつた
じぶんの骨を抱きしめて泣く。
一本の角は折れ、
一本の角は笛のやうに
天心を指して嘯く。
「鬼の児は俺ぢやない
おまへたちだぞ」
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