×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
蛇使い
町の広場で 体をゆすりながら 蛇使いが
瓢箪笛を吹きならし ひとの心をかきたてては眠りこませるとき
それに誘われてひとりのひとが
屋台店の雑踏を脱けだし
すっかり笛の魔法の圏内へ足を踏み入れることがあるかも知れない
蛇使いはひょうひょうと笛を吹き鳴らし 吹き鳴らし
蛇をその籠の中で硬ばらせては
またうっとりやわらげる
代わるがわる驚かしては 鎌首をもたげさせたり だらりとほぐしたり
次第にそれはくらくらと目もくらむばかりになってくる――
そしてあとはもうただ一瞥で足りるのだ インド人は
お前の中にひとりの見知らぬ女の姿を吹きこんでしまう
そしてお前はその女の中で死ぬ ぎらぎらと燃えた大空が
お前のうえに倒れかかってくるようで お前の視野を貫いて
一すじの亀裂が走る 香油が
お前の北国の追憶のうえにひろがり
追憶はもうなんの役にもたたない お前を安全に守るどんな力もなく
太陽は沸きたち 熱病がまともに襲いかかってくるのだ
そして邪悪な喜びに竿のように硬ばった
蛇の中で毒液が光っている
町の広場で 体をゆすりながら 蛇使いが
瓢箪笛を吹きならし ひとの心をかきたてては眠りこませるとき
それに誘われてひとりのひとが
屋台店の雑踏を脱けだし
すっかり笛の魔法の圏内へ足を踏み入れることがあるかも知れない
蛇使いはひょうひょうと笛を吹き鳴らし 吹き鳴らし
蛇をその籠の中で硬ばらせては
またうっとりやわらげる
代わるがわる驚かしては 鎌首をもたげさせたり だらりとほぐしたり
次第にそれはくらくらと目もくらむばかりになってくる――
そしてあとはもうただ一瞥で足りるのだ インド人は
お前の中にひとりの見知らぬ女の姿を吹きこんでしまう
そしてお前はその女の中で死ぬ ぎらぎらと燃えた大空が
お前のうえに倒れかかってくるようで お前の視野を貫いて
一すじの亀裂が走る 香油が
お前の北国の追憶のうえにひろがり
追憶はもうなんの役にもたたない お前を安全に守るどんな力もなく
太陽は沸きたち 熱病がまともに襲いかかってくるのだ
そして邪悪な喜びに竿のように硬ばった
蛇の中で毒液が光っている
PR
厭な奴
ジャン・モレアスに
月あかりひときわ不気味に痩せて見せる
髑髏の目つきして
僕の過去のすべてが――否、僕の悔恨のすべてがと言おう、――
窓外で僕を冷笑する。
芝居でだけ見るような、
ひどく衰えた老人の声で
僕の悔恨のすべてが――否、僕の過去のすべてがと言おう、――
ふざけた端唄を口ずさぶ。
青ぐろくなった縊死者のそれのような指で
この妙な男がギターをかなで
そして見とおしの利く未来の前に立って
珍しく弾みのある歌に合わせて踊り出す。
「老いた道化よ、面白くもない、
そんな歌はやめろ、そんな踊りはよせ」
すると例の気味わるい声で奴が答える
「これはお前が思うほど、おどけや冗談ではないぞ。
おお、心やさしい青二才よ、
これがお前の気に入ろうと入るまいと
一向にわしはかまわない
厭なら勝手に出てお行き!」
ジャン・モレアスに
月あかりひときわ不気味に痩せて見せる
髑髏の目つきして
僕の過去のすべてが――否、僕の悔恨のすべてがと言おう、――
窓外で僕を冷笑する。
芝居でだけ見るような、
ひどく衰えた老人の声で
僕の悔恨のすべてが――否、僕の過去のすべてがと言おう、――
ふざけた端唄を口ずさぶ。
青ぐろくなった縊死者のそれのような指で
この妙な男がギターをかなで
そして見とおしの利く未来の前に立って
珍しく弾みのある歌に合わせて踊り出す。
「老いた道化よ、面白くもない、
そんな歌はやめろ、そんな踊りはよせ」
すると例の気味わるい声で奴が答える
「これはお前が思うほど、おどけや冗談ではないぞ。
おお、心やさしい青二才よ、
これがお前の気に入ろうと入るまいと
一向にわしはかまわない
厭なら勝手に出てお行き!」
ロンドン・ブリッジ
あの黒い水を見てごらん
「人市」の汚物を押し流す泥の大河をごらん。
お前はそこに見るだろう、時に
日光を受けて金いろに光る藁屑が流れて行くのを。
出来るならつぎに、僕の心の中をごらん!
お前はそこに仄かな光を見るかも知れない
これは僕の心が、むかし美しかったころの、思い出のようなもの
だ
これがあるために、心はせめて、いくぶんかなぐさめられる。
どうやら希望は日光に似ている
言わばどちらも明るさだ
一つは荒んだ心の聖い夢となり
一つは泥水に金の光を浮かべてくれる。
あの黒い水を見てごらん
「人市」の汚物を押し流す泥の大河をごらん。
お前はそこに見るだろう、時に
日光を受けて金いろに光る藁屑が流れて行くのを。
出来るならつぎに、僕の心の中をごらん!
お前はそこに仄かな光を見るかも知れない
これは僕の心が、むかし美しかったころの、思い出のようなもの
だ
これがあるために、心はせめて、いくぶんかなぐさめられる。
どうやら希望は日光に似ている
言わばどちらも明るさだ
一つは荒んだ心の聖い夢となり
一つは泥水に金の光を浮かべてくれる。