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  老人はなぜ気が狂(ふ)れてはならぬか

老人はなぜ気が狂れてはならぬか。
魚釣りの名手で、たのもしい少年であったが、
飲んだくれの新聞記者になったこと、
ダンテについては何でも知り尽くしている女が
やがて、うすのろの男の種を孕んで子を生んだこと、
社会福利事業の夢をいだくヘレンにも似た女が
遊覧馬車に飛び乗って絶叫したことなどを見た人がいる。
人によっては、偶然が、良い人を飢えさせ、
悪人を発展させるのは、やむをえぬ成行と考え、
また、自分の近くの人々には、明るい幕(スクリーン)に描かれたように
明々白々に現れるとしても、傷心を知らぬ幸福な心、
門出にふさわしい結果をもった身の上話など、
何一つ見出だせぬということも、ありうる成行と思う。
若者どもは、かかることは、何も御存じない。
万事万端に油断ない老人には
このことがよくわかっているのだ。
古書典籍にいわれていることどもを悟り、
ほかにはよい術(すべ)がないと悟ると、
老人がなぜ気が狂れるかという仔細を納得する。



尾島庄太郎訳
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