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 『王さま。おまえはいつもそうだったな。
ラケットで玉をはね返す心得で
わしらの願書を受け取る係の、おまえの腹黒い家来とぐるになって
小遣いかせぎをしていたじゃないか。それがみな、おまえのわるがしこささ。
性悪な家来どもは、さもさも見くだしたようにわしらのほうを見て、
なんてえ馬鹿な奴らだ、と低い声で、ひとり言をいってたものだ。
薔薇のうつくしい布告や、薬品をみたした小壺の封印をしたり、
悪法令の準備をいそいだり、
いかに手際よく人頭税をかけるかをたのしんだり、その手あいときたら
わしらがそばを歩くと、くさいと言わんばかりのそぶりなのだ。
 (わしらをきたないとおっしゃるのは、おどろいたね。
それが、わしらの親切な代理人さんたちなんだ!)
恐るるものを無くするためには、銃槍しかないとはどうだ!
よろしい。あいつらの鈴のついた煙草入れなんかに用はない。
わしらは、あんな低脳や、穀つぶしどもには倦々してる。市民よ。
わしらが勇敢で、すでに、王笏や、僧杖をぶち折ったとき、
ささげられた御馳走というのが、こんなんだね?』




ランボー詩集 拾遺「鍛冶屋」の一節 金子光晴訳
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