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  勧告のバラッド


堕落して、思慮分別を失って、
根性はひがみ、智慧は働かず、
常識が缺けて、道理の判らぬ 男たちよ、
生まれながらの本性に背いた仕事をやつている、
途方もない馬鹿、無知の充満した阿呆ども、
卑怯未練な心から 厭でたまらぬ死に屈従
している奴等よ、ああ、君たちを恥辱の中に
陥れる醜さが なぜ君たちに悔恨を起こさせないのか。
如何に多くの若者が 他人(ひと)の所有の財寶を
奪ひ取らうとして死ぬか、よく鑑(かんが)みよ。

人 各々は 過ちを自分の中に 看(かへり)みて、
復讐をしてはならない、じつと耐(こら)へよ、
俺たちは この世が牢屋であることを よく知つている。
だからと言つてその為に、短氣でない有徳の人は
ぶつたり、蹴たり、攫(さら)つたり、盗んだり、掠奪したり、
無法に人を殺(あや)めたりするのを、正しい道とはしない。
かういふ非行に 青春を過ごす輩は
神からは 見棄てられ、眞理には 全く反(そむ)いて、
揚句の果ては、他人(ひと)の所有の財寶を
奪ひ取らうと 拳骨や腕を捩(ねじ)つて苦悶する。

ちよろまかし、お世辞をつかひ、裏切つていながら笑ひ、
お恵みを乞ひ、嘘をつき、確信も無いのに断言し、
からかつたり、瞞(だまか)したり、毒藥を調合したり、
罪を犯した生活をして、隣人を信用せずに
疑心を抱いて眠つたり、そんな事が何にならうか。
そこで俺は結論する。 善を行ふ努力をしよう、
勇氣を振ひ起さう、神の励(はげ)ましに応へよう、
俺たちは安堵する日が一週に一日もなく、
他人(ひと)の所有の財寶を 奪ひ取らうとする俺たちの
悪事の因果応報は 親兄弟にも跳辺(はねかへ)つて来る。

平和に暮らさう、確執を絶滅しよう。
若者も老人も、皆、一致して和合しよう。
神の掟(おきて)がそれを望むのだ、使徒パウロは
適法的に 羅馬書(ロマしょ)の中に さう語る。
俺たちに必要なのは、秩序と、身分や信頼だ。
それらの点に氣を附けよう。他人(ひと)の所有の財寶を
奪ひ取らうとして真の神の港を失はぬやうに。



鈴木信太郎訳


http://ja.wikipedia.org/wiki/フランソワ・ヴィヨン

雑詩篇からの一節。
『形見の歌』『遺言詩集』から一説引用しようかなとも思ったけれど、なんか時期はずれのような気がしたし、妙に長いからやめた。


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