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昇(のぼ)りぬる煙はそれと分(わ)かねどもなべて雲井の哀れなるかな

限りあればうす墨衣浅けれど涙ぞ袖(そで)を淵(ふち)となしける

結び置くかたみの子だになかりせば何に忍ぶの草を摘ままし

時しもあれ秋やは人の別るべき有るを見るだに恋しきものを

とまる身も消えしも同じ露の世に心置くらんほどぞはかなき

草枯れの籬(まがき)に残る撫子を別れし秋の形見とぞ見る

今も見てなかなか袖(そで)を濡(ぬ)らすかな垣(かき)ほあれにしやまと撫子

亡(な)き魂(たま)ぞいとど悲しき寝し床(とこ)のあくがれがたき心ならひに

君なくて塵(ちり)積もりぬる床なつの露うち払ひいく夜寝(い)ぬらん





源氏物語 「葵」(与謝野晶子訳)
http://www.aozora.gr.jp/cards/000052/files/5024_11085.html 
あらすじ等
http://ja.wikipedia.org/wiki/葵

その後葵の上は、病の床についてしまう。それは六条御息所の生霊の仕業だった。8月の中ごろに彼女は難産のすえ男子(夕霧)を出産するが、数日生霊により後息絶える。火葬と葬儀は8月20日過ぎに行われた。

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