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虚無の味覚
陰鬱な精神よ、昔はあれほどたたかいが好きだったのに、
拍車を蹴っておまえの癇の強さを掻き立てた、あの「希望」さえ
おまえにまたがろうとはしなくなった! 恥を忘れて横になれ、
老いぼれ馬め、邪魔物一つ一つに足がつまずく。
諦めろ、私の心よ。けだものの眠りを眠れ。
負かされて、へばり込んだ精神よ! 老いた泥棒、おまえには
恋ももう味がなくなり、いさかいももうつまらない。
ではお別れだ、金管(ブラス)の歌よ、フルートの溜息よ!
楽しみよ、陰気にふさいだ心を誘うのはもうやめてくれ!
すばらしい「春」ももはや匂いを失った!
そして「時間」が刻一刻と私を呑みこんでいく、
硬直した死体を大雪が呑み尽くすように。
高みから 丸い地球をつくづくと眺めてみても
身をひそめるあばら屋ひとつ もう見つからない。
雪崩よ、ひと思いに私をさらってくれないか?
ボードレール「悪の華」より 安藤元雄訳
陰鬱な精神よ、昔はあれほどたたかいが好きだったのに、
拍車を蹴っておまえの癇の強さを掻き立てた、あの「希望」さえ
おまえにまたがろうとはしなくなった! 恥を忘れて横になれ、
老いぼれ馬め、邪魔物一つ一つに足がつまずく。
諦めろ、私の心よ。けだものの眠りを眠れ。
負かされて、へばり込んだ精神よ! 老いた泥棒、おまえには
恋ももう味がなくなり、いさかいももうつまらない。
ではお別れだ、金管(ブラス)の歌よ、フルートの溜息よ!
楽しみよ、陰気にふさいだ心を誘うのはもうやめてくれ!
すばらしい「春」ももはや匂いを失った!
そして「時間」が刻一刻と私を呑みこんでいく、
硬直した死体を大雪が呑み尽くすように。
高みから 丸い地球をつくづくと眺めてみても
身をひそめるあばら屋ひとつ もう見つからない。
雪崩よ、ひと思いに私をさらってくれないか?
ボードレール「悪の華」より 安藤元雄訳
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かつては闘争を好みし陰鬱なる精神(こころ)よ、
拍車を以て汝の熱情を煽りたる希望は
もはや汝に乗るを欲せず! 恬然(てんぜん)として倒れ伏すべし、
一歩は一歩ことごとに物に躓く老いぼれ馬よ。
諦めよ、わが心、獣の眠りを眠れかし。
歩み疲れし敗残の精神(こころ)よ! 汝、老いたる剽盗(ひょうとう)には
恋愛はもはやなんの味わいもなく、討論とてもまた然り。
喇叭(らっぱ)の歌声、笛(フリュート)の吐息、いざさらば!
歓楽よ、もはやふて腐れの暗澹たる心を唆(そその)かすなかれ!
めでたき春はすでに香気を失いてけり!
かくて降りやまぬ大雪が凍えし身体(からだ)を
埋むるがごとく、時は刻々われを嚥(の)みゆく。
われ高みより丸き下界をうち眺めつつ
隠れ棲むべき伏屋(ふせや)だにもはや求めず!
雪崩よ、押し寄せてわれを攫(さら)い行かずや。