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 わるくち

いまではあなたは
人のうわさばかり気にしていて
人のうわさばかり気にしていることを
恥じもせずだれかれしゃべっていると
わたしは人のうわさで知りました
むかしのあなたは
人のうわさなど気にしたくない
人のうわさなど気にする自分をどうかしてほしいと
恥ずかしそうにでもはっきりと言ったのを
わたしはわたしの耳で聞きました

女はそばにいる男しだいでどうにでもなる
そんな程度低いことばさえ
わめきたくなる! わめきたくなる!
あんたは忘れられればいいんだ
あんたのことなど誰ひとり憶えていないほうがいい

わたしだけが憶えていてあげよう
なんてキザなセリフもひとりごとでならいえますよ
でもわたしはわたしの悔しさ伝えるために
ひとのうわさなど利用しないからね
──バカですねえ あなたも





 もとより友とする者とてもなく

追われたのでもなく
逃げだしたのでもなく
川があるから川を渡った
山があるから山に入った
雨が降り雷も鳴ってはいたが……
探したのでもなく
切に求めたのでもなく
疲れたから口をあけてただ眠った
入道雲の峰を越え
黒い馬が踊りでて
まっすぐに頭上に駆けてきて
ふいにその腹が裂け血と内臓がばらばら降ってきた
目をひらくと
松の根元にミヤコワスレの花が咲いていた

美しいものはもうないと思いきめて生きてきた
美しい風景 色も形もコトバも
そんなものはクソクラエだと思いつめて生きのびてきた
生まれてこない人生のほうがどんなに生きやすかったこ
 とか

風の小さな渦の中の
ミヤコワスレの花よ
おまえの可愛いい悪意をどうしてくれよう!
忘れよと
あのひとの名を告げるなんて




秋山基夫詩集『古風な恋唄』かわら版・刊(1980) 全篇
http://www.interq.or.jp/www1/ipsenon/p/aki4.html

秋山基夫集
http://www.interq.or.jp/www1/ipsenon/p/info11.html#akiyama

ミヤコワスレの花

ミヤコワスレ
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