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ああ、俺という男は。造化のいたずら、出来そこない、
しなをつくってそぞろ歩く浮気な森の精の前を、様子ぶってうろつき廻るにふさわしい粋な押出しが、てんから無いのだ、この俺には。
あのおためごかしの自然にだまされて、美しい五体の均整などあったものか、
寸たらずに切詰められ、ぶざまな半出来のまま、この世に投げやりに放りだされたというわけだ。
ゆがんでいる、びっこだ、そばを通れば、犬も吠える。
そうさ、そういう俺に、戦も終わり、笛や太鼓に踊る惰弱な御時世が、一体どんな楽しみを見つけてくれるというのだ。
日なたで自分の影法師にそっと眺め入り、そのぶざまな形を肴に、即興の小唄でも口ずさむしか手はあるまい、
口先ばかりの、この虚飾の世界、今さら色男めかして楽しむことも出来はせぬ、
そうと決れば、道は一つ、思いきり悪党になって見せるぞ、
ありとあらゆるこの世の慰みごとを呪ってやる。




シェークスピア 福田恆存訳
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