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  解き得ぬ謎

    

チューリップのおもて、糸杉のあで姿よ、
わが面影のいかばかりか麗しかろうと、
なんのためにこうしてわれを久遠の絵師は
土のうてなになんか飾ったものだろう?

    

もともと無理矢理つれ出された世界なんだ、
生きてなやみのほか得るところ何があったか?
今は、何のために来り住みそして去るのやら
わかりもしないで、しぶしぶ世をさるのだ!

    

自分が来て宇宙になんの益があったか?
また行けばとて格別変化があったか?
いったい何のためにこうして来り去るのか、
この耳に説きあかしてくれた人があったか?

    

魂よ、謎を解くことはお前には出来ない。
さかしい知者の立場になることは出来ない。
せめては酒と盃でこの世に楽土をひらこう。
あの世でお前が楽土に行けるとはきまってはいない。

    

生きてこの世の理を知りつくした魂なら、
死してあの世の謎も解けたであろうか。
今おのが身にいて何もわからないお前に、
あした身をはなれて何がわかろうか?

    

いつまで水のうえに瓦を積んでおれようや!
仏教徒や拝火教との説にはもう飽きはてた。
またの世に地獄があるなどと言うのは誰か?
誰か地獄から帰って来たとでも言うのか?

    

創世の神秘は君もわれも知らない。
その謎は君やわれには解けない。
何を言い合おうと幕の外のこと、
その幕がおりたらわれらは形もない。

    

この万象の海ほど不思議なものはない、
誰ひとりそのみなもとをつきとめた人はない。
あてずっぽうにめいめい勝手なことは言ったが、
真相を明らかにすることは誰にも出来ない。

    

このたかどのを宿とするかの天体の群
こそは博士らの心になやみのたね
だが、心して見ればそれほどの天体でさえ
揺られてはしきりに頭を振る身の上。

    10

われらが来たり行ったりするこの世の中、
それはおしまいもなし、はじめもなかった。
答えようとて誰にもはっきり答えられよう――
 われらはどこから来てどこへ行くやら?

    11

造物主が万物の形をつくり出したそのとき、
なぜとじこめたのであろう、滅亡と不足の中に?
せっかく美しい形をこわすのがわからない、
もしまた美しくなかったらそれは誰の罪?

    12

苦心して学徳をつみかさねた人たちは
「世の燈明」と仰がれて光かがやきながら、
闇の世にぼそぼそお伽ばなしをしたばかりで、
夜も明けやらに、早や燃えつきてしまった。

    13

この道を歩んでいった人たちは、ねえ酒姫(サーキイ)
もうあの誇らしい地のふところに臥したよ。
酒をのんで、おれの言うことをききたまえ――
 あの人たちの言ったことはただの風だよ。

    14

愚かしい者ども知恵の結晶をもとめては
大空のめぐる中でくさぐさの論を立てた。
だが、ついに宇宙の謎には達せず、
しばしたわごとしてやがてねむりこけた!

    15

綺羅星の空高くいる牛――金牛星、
地の底にはまた大地を担う牛もいるし、
さあ、理性の目を開き二頭の牛の
上下にいる騾馬の一群を見るがよい。





オマル・ハイヤーム作 小川亮作訳
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